トルコリラは絶賛暴落中。理由はニュースでも流れている通り、ロシア空軍の戦闘機を撃墜したことです。以前から、ロシアの戦闘機がトルコ領空を侵犯していたニュースは流れていました。今回は、業を煮やしたトルコがとうとう実力行使をやらかした感じです。
では、この事件がトルコ経済にどのような影響を与えるのか。今回は、その視点で考える所を語りたいと思います。
- ロシア「ほら、撃ってこいよ」
- ロシアとトルコの立場の違い
- 黒海パイプライン構想が・・・
- ニュースの読み方間違えた
ロシア「ほら、撃ってこいよ」
冒頭に書いた通り、ロシア空軍って以前から領空侵犯は繰り返していたんですよ。そりゃそうです。なにしろ、ロシアからシリア行くのには、トルコ上空通った方が近道ですからね。
問題は、トルコがロシアに対して通行許可を出していなかったことですね。ロシアはともかく軍の実行力をアピールしたい国ですから、おそらく以前から領空明け渡しを要求していたのではないかと思います。ただ、トルコとロシアはISISに協調しているようで、中東問題に対するスタンスが全く異なるのです。
そんな訳で、ロシアのこれまでの領空侵犯は外交上の挑発だったのでしょう。
- ロシア「おら、撃ってこいよ」
- トルコ「しししし、知らないからな(ズドーン)」
- ロシア「痛ってー。てめー、ただで済むと思うなよ。」
- トルコ「お、お、おらしらねえだー。」
こんな感じで、外交問題に発展したと妄想しています。
ロシアとトルコの立場の違い
前述のように、今回はトルコの対ロ関係が悪化した訳ですが、もともとトルコとロシアって中東に対するスタンスが異なるんですよ。
- ロシアはシリアに関して、アサド政権を支持。ISIS討伐は軍の影響力拡大のために参加してみる。世界平和?なにそれ、おいしいの?
- トルコはアサド政権を否定。アサドとか無理だから、とっとと降りろ。ISISはアメリカに頼まれたのでやっている。クルド人(敵対している)ごと空爆していいならOK。世界平和?なにそれ、おいしいの?
同じ連合国側でも、トルコとロシアで目的が違うのですな。特に、シリア問題に対してはスタンスが180度逆で、もともと敵対関係にあってもおかしくない違いがあったりします。ISISを同じ仮想敵としながらも、今回は外交上の目的の違いが顕在化した形になりました。
黒海パイプライン構想が・・・
トルコ経済にとって、一番の問題はここ。ロシアから欧州を結ぶ原油・ガスの黒海パイプライン構想が破綻することです。
パイプライン構想については、実は本家サイトでちらりとお話したことがあります。トルコはロシア・中東と欧州を結ぶ地政学的な要点に位置しています。ロシア・中東は天然ガスと原油の生産、欧州は消費。この両者を結ぶ中間地点にトルコがあるんです。そのトルコにパイプラインを通して供給するという「黒海パイプライン構想」があるんですね。
もっとも、そのためにはロシアと仲良くする必要がある訳で、今回の対ロ関係の悪化は、構想の頓挫になりかねない一大事です。トルコとしては、パイプラインを通してやれば大きな利権が生まれますから、結構な重要事項です。直近のトルコリラは、おそらくこのリスクを忌避しているのでしょう。実際問題、ロシアの原油採掘会社が契約破棄を匂わしています。
ニュースの読み方間違えた
今回の問題に対して、管理人はたいしたことないと考えていました。ロシアはもともと、ウクライナの一件で連合国側との関係が微妙になっていたからです。多少、対ロ関係を悪化させても、経済に波及するリスクは小さいだろうなと考えていました。心理的には売りでも、良い押し目になると考えていたのです。
忘れていたのが、黒海パイプライン構想。ここが盲点でした。ここが経済的観点からの対ロ関係のボトルネックです。やっぱりマーケットは連想して売りますね。きっちり、経済上のリスクを織り込んできます。ここら辺の読みを失敗しました。トレードはトレンドラインを割って、損切りです。
まあ、実際問題としては、パイプラインの一件はロシアの外交上のブラフでしょう。ここからさらに事を荒立てると、アメリカやドイツが経済制裁を強化します。これ以上の圧力はないと考えます。
損切りラインを割ったと言え、じゃあ想定外だったかと言えばそうでもありません。こんなシナリオもあることを注意してくれるツールがありました。セントラル短資FXの「みらいチャート」です。きっちりサプライズシナリオも用意しておいてくれましたよ。