2017年1月24日、利上げ期待の高まる中でトルコ中銀の政策金利が発表されました。結果は据え置き。中銀のベンチマークとされる1週間物レポレートは8.0%の維持という結果になりました。
マーケットは発表を受けて、大きく乱高下。当初こそ粘りを見せていたものの、翌日から米経済が動き出したこともあって対ドルでは値を下げていますね。金融政策の見極めが行なわれるこの時期、投資筋・投機筋の失望を誘う結果になったのだと思います。昨年からの下落トレンドを止めた買い派も、買いにこだわる理由がなくなってしまいました。
まあ、トレンド転換はしばらくお預けかなという感想です。思う所を語っていきます。
- 利上げ期待とセル・ザ・ファクト
- 発表前後のチャート分析
- 転換点は国民投票以降かな
- 国民投票の議題
利上げ期待とセル・ザ・ファクト
期待で買って、事実で売る。
今回は、この相場格言が悪い形で決まりましたね。利上げ期待からの買い⇒金利据え置き発表で売り。悪い事実で売られてしまいました。現状維持なら別にいいじゃん、という意見もありそうなんですけど、それは時と場合によりますね。特に今回は、利上げの有無が中銀の独立性を試す意味合いが強くかったので、利上げナシはますます疑いが深まる結果となりました。
まあ思い起こせば、中銀サイドも布石は打っていましたね。利上げ以外の非伝統的手法で為替介入を続けていた訳なんですが、今後の方針を問われるインタビューに対して「効果の有無を慎重に判断していく」とチェティンカヤ中銀総裁は答えていました。確かにココだけ抜き出せば、金利据え置きは当然の判断であったとも言えます。
ただ、中銀の取っている「非伝統的手法」とやらは、常に疑問が付きまとう介入施策ですね。元々はECBのドラギ総裁が使い始めたキーワードですけど、当時のユーロ高を回避する決定打にはなりませんでした。この点を市場参加者は承知していて、根本解決(=利上げ)をするだろうと踏んでいた訳ですね。
発表前後のチャート分析
既にリラ売りが始まっている市場ですが、セオリー的にはまだ下落の余地がありますね。チャート分析です。Wボトムのチャートパターンに加えて、直近の出来事を織り交ぜると今後の行方が見えてきそうですね。
チャートをご覧の通り、ドルリラ(USD/TRY)は高値圏でのダブルボトム。パターン的にはトレンド継続の形ですね。少なくとも直近高値までは上がり、さらにその上を試しにかかるか?という流れに繋がります。
直近高値を押し戻したリラ買い派の根拠も「中銀の介入事実が明らかになった」「介入があるったからには利上げもあるだろう」でした。そのロジックも崩れてしまった訳ですから、彼らの構築したポジションも維持する理由がなくなります。レジスタンスラインの為替水準まで戻すのは当然の値動きと言えましょう。
チャートと出来事と参加者心理を紐づけて読み解けば、チャートがより理解しやすくなりますね。まあ、飽くまでセオリーはセオリー(理屈)であって、現実には例外も多々あります。逆に例外的な値動きがない限りは、やはり既定路線が続くわけで・・・。特におかしな値動きがなければ、ドル買いリラ売りが継続すると思う次第です。
転換点は国民投票以降かな
そんな訳で、管理人のスワップ狙いのポジションはお預けにします。代わりに、ドル買いに走りました。ドルリラのロングは短期ですが、ドル円をロングして中長期目線で運用していきます。NYダウ上昇⇒日経平均上昇⇒ドル円上昇と、セオリー通りの値動きがありました。1月のこの時期にファンド勢か買ってくれたので、5月位までは株高+ドル高・円安が継続しそうです。
今回の中銀発表の後に思いついたのは「中銀は国民投票を意識しているのではないか?」という推測です。完全に邪推ですが、効果的に通貨防衛をしたいという観点では、仮説としては良さそうな感じです。実際、チェティンカヤ総裁の言う「物価の高騰は好ましくない」「インフレ率の低減を目指す」「(国内の)ファンダメンタルズと乖離する為替レートは許せない」等の発言に、飽くまで国内の動向を意識する発言が目立ちます。米国や欧州、ロシア等の海外に対する見解は見当たりません(まあ、中銀の仕事でもないことは確かですが)。
仮説とは言っても、国民投票は相応のインパクトがありますから、少なからず各方面に影響しそうですね。中銀総裁としても、今後の動向を見て政策を決めたいとの考えがあるのであれば、それはそれで納得がいきます。以上は飽くまで仮説であり、結果的には妄想になるかも知れません。それもそのはず。例年2月は政策のちゃぶ台返しがあるのです。
来月の会合で利上げとか言い出しても、それはそれで独立性のある判断と評価されるのでOKですね。シナリオは想定しつつも、将来予想に対してはニュートラル。これは相場で重要な姿勢だと思います。
国民投票の議題
国民投票の実施は、3月から5月の間にと予定されています。焦点となっている議題は以下の通りです。
- 大統領権限の強化
- 死刑制度復活の有無+EU加盟の意思確認
大統領権限の強化は、まあアレですね。エルドアン大統領のワンマンを強めるとの批判がありますけど、隣国シリアはアサド大統領がコケてああなった訳で、分からなくもない政策だと思います。死刑制度復活は、権限強化を補うための内容ですかね。トレードオフとして、EUの人権保護ポリシーに抵触してしまうので、EU加盟の意思を確認するという内容にすり替わっています。
まあ、基本路線としては両方アリという結果が予想されます。まあ、基本は基本で例外アリです。その時の市場の反応を見ながらポジションを取りましょうか。