今回は、為替から少し離れて、トルコの成長を促す産業政策の一つ。自動車産業の成長戦略について語ります。本来、短期運用とは関係ない事柄ですが、リラ買いに賭ける読者の方は、知っておいてもよい事実でしょう。長期的な視点で、為替を見ることができます。
トルコは、自動車生産をはじめとする産業の成長戦略を持っています。ここら辺のニュースが経済サイトに流れることもあります。以下には、本ブログで掲載した記事を元に、トルコの自動車産業と成長戦略を語ります。
- トルコでプリウス作るんか?
- 自動車産業の課題は高度化・高収益化
- インフレ率のベンチマークはユーロ?
- コア部品開発で目指せ高利益
トルコでプリウス作るんか?
先日、日本のニュースで「トヨタがトルコでハイブリッド車を生産」と報じられました。トルコにとって、自動車は、重要な輸出産業の芽です。生産数が増加することは、トルコ経済にとってもプラスに働きます。
トヨタ、トルコでハイブリッド車生産へ
[イスタンブール 11日 ロイター] – トヨタ自動車(7203.T)は11日、トルコで今年、新型ハイブリッドエンジンカーモデルの生産を始める方針を明らかにした。3億5000万ユーロ超(3億9600万ドル)を投資する。
欧州部門のヨハン・ファン・ゼイル最高経営責任者(CEO)は記者会見で、ハイブリッド車のトルコ生産は初めてと指摘。「新型モデルはクロスオーバー、一種のスポーツ多目的車(SUV)」で、53カ国に輸出すると語った。
まあ、以前からプリウスの現地販売はやっていたみたいで、トルコ政府としては現地生産もしたかったのでしょう。自動車産業に力を入れるトルコ政府とトヨタの希望が一致した形です。
「ハイブリッド車であってプリウスじゃないよ」というツッコミがありそうですが、まあ細かいことは気にしない。大体にして、海外向けの自動車って名前とデザインだけ違って中身同じというのが往々にしてあります。
こんなこと言うと、トヨタさんに怒られそうです。管理人の会社の一番怖いお客さんです。でもマツダ車が好きです。
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自動車産業の課題は高度化・高収益化
自動車産業に力を入れているとは言え、トルコ政府が国営企業を運営している訳ではありません。外資系企業を誘致することがもっぱらの振興策です。今回のトヨタみたいな外資系企業に対し、設備投資の分だけ税率を軽減する措置をとっています。
そんな自動車産業の喫緊の課題となっているのは、利益率の向上ですね。従来、トルコ産業は組立オンリーの比較的、安価な工程を担ってきました。ただこれ、安かろう悪かろうであまり利益が上がらないのですよ。この点、ハイブリッド車のような先端技術を扱うことになったニュースは、トルコ産業の高度化・高収益に明るい材料だと思います。
インフレ率のベンチマークはユーロ?
同じく最近の話題。昨年末から、にわかにトルコ政策金利の利上げ期待が浮上してきています。対ドルでは下げ止まった感があるトルコリラですが、対ユーロで下落が続いています。ほとんどユーロ圏なトルコとしては、対ドルよりも対ユーロでの下落が気になるんじゃないでしょうか。
利上げに反対のエルドアン首相も、米国への投資に対してトルコリラが弱くなることを懸念しています。この点はトルコ中銀と方向性が同じです。そのトルコ中銀が、最近になってインフレ懸念を示しています。実際、物価指数が上昇を続けています。
ここからは推測ですが、トルコ中銀はユーロをベンチマークに計算しいているような気がします。トルコと言えば、EU圏と密接に関係がある訳で、おそらく輸入も輸出もユーロの為替レートが支配しているのでしょう。あくまで個人的な推測でしかありませんが。
実際問題、トルコの自動車含む主要な輸出先は、ユーロ圏メインです(特に1位のドイツ)。ユーロも最近はもっぱら買われていますから、中銀にも焦りがあるのでしょうか。まあ、憶測の範囲です。
コア部品開発で目指せ高利益
繰り返しになりますが、トルコ自動車産業の今後の課題は収益率の向上です。自動車産業といっても、要は組立産業です。日本人に身近な例で言えば、10年ほど前の中国を思い浮かべてくれればよいでしょう。安い労働力を使って、低コストで組立を行う残念な感じのアレです。最近は、日本の企業努力のおかげで質も向上していますが。
同じような理由で、トルコも重要部品を作ってきませんでした。必然的に、安かろう悪かろうの産業構造でした。そりゃ、貿易収支も上がらない訳です。今後の課題は、利益率の向上による収支改善。具体的には、いかに重要なコア部品を作っていくか(=外資の高度技術を誘致するか)ということです。
という訳で、やっぱりまた、税率軽減をやっています。特に高度技術を対象に。そして、トヨタやフォルクスワーゲンなんかが工場を進出しています。まあ、トヨタ以外にも名だたる自動車メーカーが進出していますね。以前に具体的な企業名も調査してみました。